アスワンはナイル川の上流にある街。エジプトの南の方にあって、この時期でも上着を着ているとけっこう暑かった。
上の写真は泊まったホテルの屋上から。ヨットみたいな船が川の上にいくつも浮かんでいるのが見えます。フルーカと呼ばれる船です。
その日は観光に行く予定もなくあとは寝るだけ、時間も余っていたので、フルーカに乗ってみることにしました。
そして今回の旅行の中でも自分にとっては1・2を争う印象的な時間を、このフルーカの上で過ごすことができました。
といっても、その上で特別なイベントがあったわけではなく、フルーカに乗って川をゆらゆらしていただけなのですが、これがなんとも気持ちいいのです。
帆の方向を変えて風を受ける量を調節して、スピードを緩めたり速めたりします。風に対して直角に帆を張れば、ほんの少しの風でも船は進みます。ちょっと強い風が吹いてくると、ドンドン進みます。
モーターボートばっかり乗って知らなかった、風だけで船ってこんなに速く進むんだ!と思いました。
風で走るので音はほとんどありません。
目を閉じると船に当たる波の音と、船のゆれる音だけが聞こえます。
風と、水の音。それだけで、なんて気持ちいい。
目を閉じると船に当たる波の音と、船のゆれる音だけが聞こえます。
風と、水の音。それだけで、なんて気持ちいい。
冬の寒いフィンランドでは忘れかけていた感覚でした。
* * * * *
風関係の話。
フルーカに乗っていたとき、日本で半年前まで住んでいた自分のアパートの部屋のことを思い出していました。
その部屋の南側にはベランダに出るための大きなガラス戸があって、北側にある台所の窓も一緒に開けると、部屋の隅から隅まで気持ちのいい風が抜けるのです。
そしてそういう風にふかれていると、なんとなく気持ちも明るくなって、昔のいい思い出が思い浮かんだり、家にいるつもりだったのにどこかに出かけたい気分になったりするのです。
外に出かけて、いい気分になって帰って来ます。
そして、ふと思うのです。
はてさて、今日自分が楽しい気分になれたのは、
外に出ることを決めた自分のおかげかな?
それとも、この眺めがよくて、風の抜ける大きな窓のおかげかな?
* * *
アアルト自邸に行ったときも思いましたが、
家のある部分が、知らず知らずのうちに住む人を幸せにしていることってあると思うのです。
木の手摺の階段を、その感触を手に足に感じながら上ったり下りたりする。
窓からの気持ちいい風に吹かれながら、考え事をする。
そうやってるうちに、いい考えが浮かんだり、気持ちが明るくなったりするものです。
もしも家がたくさんのそういうもの達の集まりだったら、どんなに楽しいだろう!
直接的ではないにせよその毎日の積み重ねは、住む人の人生とか価値観をも変えていく強い力をきっと持っています。
僕は、建築の環境とはそういうものだと思います。
設計課題では、明快なコンセプトや独創的な形で人をあっと言わせるのもいいかもしれません。それもとても大事です。けれども、あたりまえで目立たない建築の部分、素直に人を幸せにすることができる部分のことも、もっとしっかり考えたい。と最近は思っています。
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