2010/09/26

Ainola

教会を見た後はシベリウスゆかりの地、アイノラへ向かうため電車に。

アイノラはシベリウスが1904年から亡くなるまでの53年の間暮らした場所。つまり多くの曲がここ、アイノラで書かれたわけですね。場所の名前Ainolaは、彼の奥さんの名前Ainoからきています。

フィンランドにいてシベリウス好きならば、ここへ行かずにどこへ行く!?
アイノラは夏の間の5月〜9月までしか空いていないらしいので、晴れて本当によかった。

ヘルシンキ中央駅から電車で30分。Järvenpää駅に到着します。

湖沿いの公園を歩いて向かう。

カモかも。

けっこう遠いです。

歩くこと約30分…


着きました。その家はとても静かな林の中にあります。

中は写真禁止だったので写真はありませんが、実際に使われていたらしいピアノや家具、食器などが展示されていました。

時期が9月の終わりだったからでしょうか。人も少なく、観光地的な雰囲気は全然ありませんでした。西日の柔らかい光の中で、時間のとまったかのような静かな空気。
静かな森の中の家。まるでシベリウスが暮らした時代にいるかのような気持ちになります。
書斎なんかは、今まさにシベリウスが椅子に座って曲を書いていてもおかしくない、そんな雰囲気でした。

少し離れたところにあるサウナ小屋。

その中。


シベリウスのお墓はここアイノラにあります。彼とアイノは、この場所をとても愛していたそうで、自分たちが死んだらぜひこの場所に一緒に埋葬してほしいと言っていたそうです。

その願い叶って、今この場所に眠っています。日当りのいい場所です。

お墓の上には大きな白樺の木があります。
風で木がそよぐ音が聞こえます。

これは、シベリウスの音楽を聴いているときに聴こえる音。


ここの木陰はシベリウスが音楽の創作のために、切り株に座って長い間思索にふけった場所。彼はここを"The temple"と呼んでいたらしいです。…お寺?

こんな場所で暮らして曲を作っていたら、あんな曲も浮かびますわなー。

見終わって、出口。

アイノラを出たところの木々。もうすでに紅葉が始まっていて、葉も散り始めています。
シベリウスも見たであろう風景。

シベリウスは風景と調性を結びつけて、「この風景は○長調」などと考えることができたらしいです。そういえばアイノラに来る前に見てきた教会の設計者・レイヴィスカも音楽好きであったらしく、その建築には彼の音楽の趣味が現れていると書かれていました。自分は音楽の理論的なことはよくわかりませんが、彼ら程になると風景から音楽が、音楽から空間が浮かんでくるようになるのかな。。

ともかく、また来たくなるとてもよい場所でした!




駅までの帰り道。フィンランドの空はとても広い。
そして最近は光の色がとてもやわらかい。


風景を音楽として感じるということ。
今日この風景は、シベリウスには何調に見えるのかな?


Pakila Church

最近はずっと曇りと雨の日が続いていたのですが、今日は久しぶりに晴れました。
なので今日は晴れたらぜひ行ってみたかったところに行くことに。

バスに乗ってヘルシンキへ行くためバス停へ。

今まで雲に隠れて気がつかなかったけど、太陽高度がだいぶ低くなっていました。
昼の12時なのに、影がとても長い。


20分ほどでヘルシンキ着。日差しが夏とは全然違って、なんだか柔らかい感じです。

駅前のバス停からバスに乗って30分。

Juha Leiviska "Pakila Church"

最初に見て以来、とても好きになったフィンランド人建築家
ユハ・レイヴィスカ設計のパキラ教会です。

レイヴィスカの教会を訪れるのはミュールマキマンニストに続いて3つめ。


入口側。中に入ります。











レイヴィスカは「建築と音楽は最も近しい芸術である」と言っていたそうです。

この建築はどんな音楽が聴こえる?



壁の裏側には木の板を塗装したものが取り付けられています。
こうすることによって、窓から入ってきた光がこの板に反射して
正面から見ると白い壁が色づいてみえるというわけです。

同じような手法で白一色の空間に淡い色彩が取り入れられているのは他の二つの教会にも共通していましたが、ミュールマキではテキスタイル、マンニストでは壁に直接塗装するという方法が使われていました。それぞれ色の出方とか、雰囲気が微妙に違ってておもしろいです。





これまでも教会建築は何度か見学にいきましたが、実は今回は少し様子が違っていました。
中でお葬式が行われ始めたのです。

一番後ろに座り、立ち会わせていただきました。


教会に満たされるパイプオルガンの響き。

賛美歌。

聖書朗読。

一言と共に、献花。

最後にオルガンの伴奏でG線上のアリアが演奏される。

その背後に美しく伸び、刻々と変化していく太陽光。

風に揺れる木々の影。

その一連の流れを見ていると、

なんだか本当にこの空間が神々しいものに思えてきて感動を抑えられませんでした。

残された人々の、亡き人を送る想い。

今も昔も変わらない、脈々と続けられてきた行為。

この教会は、ずっと人々の生活とともにある「生きている建築」だと感じました。



その後ヘルシンキへ戻り、シベリウスの暮らした地アイノラへと向かいます。


行き方
ヘルシンキ中央駅横のバス乗り場から67番のバスで約25分。Halkosuontie下車。その後徒歩約5分。
下の検索サイト(Joruney Planner)でfromに”Helsinki Railway Station”、toに”Pakila Church”と入れれば詳しくわかります。
http://www.reittiopas.fi/en/

2010/09/22

静かな夜にだんだんと模型ができていくときの感じ


今週もアパートにて模型作りを進めています。
キッチンにて鍋で湯を温めて、木材を蒸気に当てます。
こうすると木材が曲がるのです。

夜遅くにキッチンでコトコト煮える鍋を前に木材を曲げているとなんだか落ち着きます。
端から見ると何やってるんだと怪しまれそうな光景ですが。
隣に住んでるフィンランド人に「こんな遅くまで料理?」と聞かれたので、模型を作っているんだと応えました。
なんとか怪しまれずに納得してもらえたようです。
彼によるとフィンランドでも建築学生は忙しそうにしているらしいです。やっぱりあの謎の忙しさ不毛かもしれない徹夜は世界共通なんですね。
ちなみに今はまだそんなに忙しくないので普通に寝れています。


こうして静かな夜に模型が少しずつ出来ていくときの感じがとても好きです。

練習始動!


昨日はオケの練習に行ってきました。
一週間に1回練習があります。

12月のクリスマスコンサートではシベリウスの3番をやるみたいです。
最近はシベ3をよく聞いています。なんだかシベリウスに恋している。

図書館で今まで聞いてたのと違う指揮者のCDを借りてきて、
ヘルシンキの楽器屋で譜面代も買ってきた。スコアも買ってきた。

製本もして、練習体勢もばっちり。

さっそく練習を始めなくては。

練習場所は果たしてあるのだろうかと心配していたのですが、オケのみなさんに聞くとみなさん自分の部屋で練習しているといっていました。
なんとまあ。じゃあ僕も部屋で練習しようと思います。
苦情がこないといいな。

ちなみに同じ時期に、日本では後輩達がシベリウスの2番をやるらしい。
3年生はこれで引退だね。遠くフィンランドから応援しております。

2010/09/17

木造な夜


設計スタジオのミニプレゼンがもうすぐです。

課題は"wooden modular office"。
新しく開発される地域に、開発中の期間だけ仮設的に設置される小さな木造オフィスを設計するというもの。
オフィスは役目が終わったら解体して別の敷地に運ばれるので、組み立て、解体、持ち運びのシステムについても考えます。最終的には部材の組み方などのディテールも図面にするらしいです。

木造の細かい部分まで考えるというのは、今までやったことのない類の課題で、この課題に取り組むことに大きな楽しみを感じています。

というわけで最近の生活は
朝起きて1、2個授業に出て、あとは図書館や家で設計課題を考えるという地味なものに。

ふぅ。

じゃそろそろ作業に戻ります。

2010/09/12

Andante festivo

シベリウスのAndante festivo。

この曲を最近よく聴いている。

この曲を聴くと、フィンランドの美しい自然の風景が目に浮かんできて、勇気づけられる。
今まさに自分はフィンランドにいるのだということを思い出させてくれる。

この留学が終わる頃、この曲をどんな気持ちで聴くんだろう。と思い、気を引きしめる。


2010/09/11

感動はなかなか言葉にできない

SIBELIUS FESTIVAL 2010(2日目)

Suite champêtre

Symphony No. 6
Andante festivo
Symphony No. 7

Lahti Symphony Orchestra
Jukka-Pekka Saraste, conductor

今日から設計スタジオの授業が始まってこれから必死な日々になりそうな予感がするのですが。。。今日は授業のあと、楽しみにしていたコンサートを聴きに行ってきました。

その名もシベリウスフェスティバルです。ラハティという街で開かれるシベリウスの作品を演奏する一連の演奏会で、今年11回目を迎えるそうです。
ここラハティで生まれたオーケストラ、ラハティ交響楽団は最初は小さな街のオーケストラだったけれど今やシベリウスを演奏させれば世界一(だと思う!)、かねてから聴きに行きたいと思っていたのです。


ヘルシンキから電車で1時間、歩いて30分、シベリウスホールに到着します。ちょっとした小旅行です。場所がわからなくて焦るというアクシデントもあったけど無事到着できてよかったです。


ここシベリウスホールは音楽だけでなく、建築も周りの環境もとてもすばらしかったです。

中に入ると木造大空間のホワイエが広がっていて、演奏会開始1時間前だというのにお客さんであふれていました。

みなさんお酒を片手に楽しそう!普段着で来ている人がほとんどいなくて、Tシャツっぽいの+ジーパンの自分はとても浮いていました。みなさんドレスアップしていらっしゃるんです。

早く集まることといいおしゃれな衣装といい、みなさん演奏会というイベントをまるごと楽しもうとしているようでした。


そしてこのホールの環境は聞く前から音楽を聴く気持ちを盛り上げてくれるのです。
ホールの横にはこんな感じで湖があります。

これからシベリウスを聴くというときにこの眺め…


開演前の時間を水上レストランで過ごしている人もいました。

本日の曲目はこちら。

Suite champêtre
Symphony No. 6
Andante festivo
Symphony No. 7

Lahti Symphony Orchestra
Jukka-Pekka Saraste, conductor

今年のシベリウスフェスティバルは後期の交響曲がメインのようです。ちなみにAndante festivoはあんまりCDに収録されてないけど、最近一番のお気に入りの曲。


で、開演です。

始まって最初から泣きそうになりましたが。。。これはなんだろう。。言葉にはできせん(笑)まあシベリウスの音楽とはこれから長くつきあっていくわけだし、ここで急いで感想を言葉にすることもないかと言い訳してみます。

前半終了。


休憩の時に外に出るとこんな景色でした。


丸いところはなんだろう。。?パンフを見ると演奏者がここに上がっている写真があるので水上コンサートとかやるの、かもしれません。。?

コンサートの休憩時間にこんな景色を眺められるなんて贅沢だな。なんていいホールなんだと思いました。


建物に夕日がきれいに映っていました。



で後半です。

ラハティ響の音、言葉に出来ないほど綺麗でした。よくもあれだけいろんな表情の音を美しくだせるものだな。目にフィンランドの自然が浮かんできます。

たとえば。。。ピンと張り詰めた空気の中の鏡のような水面、、のような音。。。とかね。。うまく言えません(笑)



終演。


聴く前から気分を盛り上げてくれたこのホール、天井にチカチカ光るライトはシベリウスが生まれたときの夜空の星を再現しているのだそうです。


この場所は、音楽を聴きにきて、聴いて、帰る。
一連のことすべてがすばらしいものになるように考えられていました。
ホールも音楽も、とてもすばらしかった。

シベリウスホールでラハティ交響楽団、また聴きに来たいと思います。

2010/09/06

秋学期始動!

今日から授業が始まりました。
記念すべき最初の授業は「フィンランド語1A」でした。英語でフィンランド語習うなんて、、、授業中自分が何人かわからなくなりました。いろんな国の人とつたないフィン語で会話する。語学の授業はなかなか楽しそうです。



その後、いくつか授業を受け、学食で昼を食べたら午後2時半。

今日はこの後大学オーケストラの見学に行く予定だったのだけど、少し時間が空いたのでタピオラという街にある図書館に行ってみることにしました。大学からバスで5分ほどで着きます。



きれいな図書館。


CDコーナーも充実しています。

いくつか借りたいCDもあったので、図書館のお姉さんに言ってみたら意外と簡単に手に入りましたよ利用カード!!本などをいくつか物色して借りて帰りました。


帰ったらちょうど時間になったのでオケの練習へ。家から歩いて1分のところに練習場所があります。10月にあるドクターの入学式?の初見大会に参加させてもらいました。
腕前は東工大オケくらいと聞いていましたが、とてもうまい方がけっこういらっしゃいました。びっくりしたのがこの曲!

「Sakura」って。。。もしや!?と思ったらやっぱりそうでした。春に琴で演奏されるあの日本の「さくら」です。
秋なのにーwフィンランドに来てまさか日本の「さくら」を弾くとは思っていませんでしたが、なんだか嬉しい驚きでした。

そんな感じで9時に練習終了。
クリスマスのコンサートではシベ3を弾くみたいなので楽しみです。


本日の戦利品。シベリウスの交響曲とシューマンのチェロコン(これも今度オケでやるみたいなので)とカズオイシグロのノクターンと、、、、、、右側にあるのはご存じあずまんがです(笑)
最近英語を鍛える方法を探し中で、息抜きしつつも英語の勉強にいいかなーと思って借りてきました。あずまんがは日本で読みまくっていてセリフの内容もだいたい覚えてるしね。息抜きメインになりそうですがw
日本の漫画はやっぱりこっちでは人気あるみたいです!ドイツ人の留学生はブリーチが好きだって言ってたし、本屋に行けばたいてい置いてあるし、図書館にもいっぱいありました。

なにはともあれあの図書館はこれからもちょくちょく利用してしまいそうだな。


徐々に学生生活も動き始めて、これから忙しくなりそうな予感です。

2010/09/01

Kuopio


昨日の日記の続き。マンニスト教会を見るだけでも大満足でしたが、ここクオピオには一見の価値ありの場所がまだあります。
クオピオ周辺はフィンランドで湖水地方と呼ばれる地域にあたり、森と澄み切った湖が広大に広がっている地域です。

まさにシベリウスの曲に出てきそうなその雄大な景色をぜひ見たいと思い、プイヨヒルというちょっとした山に登ってきました。


山道を行くこと約20分、スキーのジャンプ台とタワーが見えてきます。このタワーのてっぺんには景色を見渡せるお目当ての展望台があります。

ここのジャンプ台って木でできているんだねー。

シュパッ!



高いな。ジャンパーの人はあんなとこからよく飛ぶよなー。。

その後タワーに。エレベーターを下り展望台に上ると。。




ご覧くださいこのパノラマ。言葉はありません。

冷たい風がふいていました。けど30分くらい眺めていました。

だいぶ冷えてきたのでタワーを下り、山を下りました。
その後電車でシベリウスを聴きながら帰りました。
脳内にはさっきの風景が焼き付いてて、音楽を聴いていると、一つひとつの音が風で木がそよぐ音、水面の揺れる瞬間とか色んなイメージを思い浮かばせて。。。静かに胸が熱くなるものがあります。とにかくあの景色や空気を肌で感じて、シベリウスを聴く耳が変わりました。

一日だったけど、いい旅だった。こんな景色をたくさん見たい。
この留学の終わるころ、どんな気持ちでこの音楽を聴くんだろう。

澄んだ湖、その周りに静かに広がる森、そしてその中で人々の生活の息づく様、あのどこまでも続いているかのような自然の広がりは忘れることはないと思います。