2011/05/31

London(3) -Red House-

ロンドン旅行日記第3弾。今回はロンドン中心部から電車で30分、ウィリアムモリスの「レッドハウス」。



Red House, Philip Webb & William Morris, 1859-60

レッドハウスは今から約150年前、「モダンデザインの父」と呼ばれるウィリアムモリスが結婚後数年を過ごした家。



この家は外観ももちろん、インテリアがおもしろい。






これはレッドハウスの部屋に張られている、約150年前にモリスによってデザインされた壁紙です。今家にいる方は、すぐ横に似たような壁紙が張られているかもしれません…



寄ってみる。

レッドハウスの中にこの壁紙の制作方法も展示されていました。僕は壁紙が昔どうやって作られていたか、知らなかったので驚いたのですが。。。



壁紙の柄は、このような細かい木彫りの版からつくらます。
ちょうど小学校でやった版画の要領で、この版にインクをつけて上からこすり、紙に色をつけていくのです。色がついたら、粗が出てしまったところを目でチェックして、筆で修正を加えて、完成です。



展示室にあった、モリスのデザインした壁紙のカタログ。



いろんな絵柄がありました。



使う色が一色だといいのですが、こんなふうに何色も使った複雑な絵柄の場合、各色ごとに版をつくって、それらを重ねていくことになります。最初の版が終わったら乾かして、乾いたら次の版で別の色を付けまた乾かして...ということを繰り返していきます。



中にはこんな驚くほど精巧な版も。


そして壁紙だけでなく、この家には手の込んだ細工がそこらじゅうにある。



窓ガラスに



ひとつひとつ鳥の絵が描いてあったり



ドアには



ステンドグラスのようなきれいな細工。



この部屋には



壁一面に絵が描いてあったそうです。モリスの後の持ち主によって壁は白く塗り重ねられて、今はほぼ見えなくなっていますが、ところどころ塗装が剥げて絵が見えていたり、このように保護されて残っています。



これは天井見上げ。

これらの今見ればやりすぎにも思える室内装飾の数々には、産業革命が起こり、大量生産による安くで質の悪い製品が世の中にあふれたことへの批判も込められ ていたようです。モリスについてもっと知りたくなりました。



この家に行って「壁紙」という物への印象がだいぶ変わりました。

これまで柄物の壁紙というと、なんだか安っぽい感じがしていたのですが、そこに関わってきた人たちの歴史の一端を考えると、決して「安っぽい」の一言では済ませられないことがわかります。

産業革命を経た世界の技術は飛躍的に向上し、昔は手作業でひとつひとつ作っていたものが、大量生産できるようになっていった。壁紙も、機械で大量生産されて今ではどこでも見ることができるようになった。

でもその壁紙ももとをたどれば、モリスをはじめいろんな人が、人々の生活を向上させようと手作業で一枚一枚丁寧に作りだしていたものだった。そして壁紙を大量生産できるようにした技術だってきっと、一部の人しか楽しめなかったものをより多くの人が手に取れるように、という想いから、過去の人々の努力によって作られてきたものだ。



展示の一部。モリスの言葉。

壁紙に限らず、何でも簡単に手に入るようになった現代。そこに至るまでの努力の一端を見た気がしました。

2011/05/27

タンポポ




フィンランドでもタンポポは咲く。
今、本館前はタンポポ畑になっています。

たんぽぽたんぽぽたんぽぽたんたんぽぽたんぽぽたんぽぽたんぽん。

2011/05/26

Sauna


このところ、寮のサウナに頻繁に行っている。こちらに来てたくさんサウナに入る中で、日本にはないフィンランドならではのサウナの醍醐味をいくつも発見しています。

その一つは、自分で温度調節ができること。

日本では温度は自動で保たれてますよね。こちらではどうやって温度調節するかというと。。。
上の写真の木の囲いの中にはかまどがあって、石が熱してあります。




その横にあるバケツ。中には水が汲んであって、温度を上げたいときは、熱せられた石にひしゃくで水をかけるのです。

この水をかけると時に肌にいたいほどの熱気が立ち上ってくるのですが、その瞬間がたまらない。このときだけはそれまで話していたみんなも無言になって、声にならないため息をもらして熱さに没頭します。この感じは、冬の寒い露天風呂で、熱い湯船に全身つかった瞬間の、あの感覚に近いかも。


あと忘れてはならない醍醐味は、湖とビール。

体が火照ってきたらサウナを出て外の部屋で休みながらビールを飲んだり、夏は目の前にある湖にそのまま飛び込んだりもできる。冬の場合は雪の中でキンキンに冷やしておいたビールをグイッといったり、裸で雪に飛び込んだりする人もいます。(笑。あとはビールを飲むというのも、学生ならではなのかもしれません。)



石のかまどがときたまパチパチと音を立てるサウナの中。

サウナは「会話を楽しむ場」でもあります。
その狭さやあたたかい光の色が親密な空気を作り出すのでしょうか。サウナの中はなぜだか(ビール効果も相まって?)会話が弾みます。かまどに水をかけたり、何も話さないで石のかまどをみつめているだけでも、なんだか暖かい気持ちになってきます。


というわけで、最近は週に2・3回サウナに行っています(笑)

国にはそれぞれの国の生活の仕方というのがやっぱりあって、長く生活していると、だんだんとそれに慣れてくるものだなぁ、ということを実感します。

一家に一室サウナがあるというフィンランドでは、やっぱりサウナはとても大切な生活の一部。湯船はないけどサウナが必ずある。

来た頃は、やっぱり湯船につかりたいよなぁ...と思っていたけど、最近はそうでもなくなってきて、不思議なものです。サウナがその代わりになったのかな。


ただ「温泉」だけは、いまだに無性に行きたなるくときがあります!

でもそれもよくよく考えてみると、「コンサートに行く」ということがその周りの出来事も含めて楽しいのと同じく、「温泉に行く」ことについてくるいろいろな出来事のゆえ、ということもあるのかもしれません。

温泉に向かっている車の中でいろんな話をしたりとか、温泉を出た後のコーヒー牛乳だとか、車で家に帰るときのあの感じだとか、ね。

2011/05/25

London(2) & Cambridge

イギリスには1週間ほどいたのですが、オーケストラの他にもいろいろと見て回ってきました。



シャーロックホームズの書斎や



ウェストミンスター寺院。



タワーブリッジ。



ミレニアム・ブリッジから見るテートモダン。



国会議事堂。赤い2階建てバス。


ロンドンの都会感、ヨーロッパ感には圧倒されました。森と湖の国フィンランドにずっといると忘れてしまう。これに比べるとヘルシンキはやっぱりとても小さい町だ。



ロンドンの他にはケンブリッジにも行ってきました。

ケンブリッジには「カレッジ」と呼ばれる組織がいくつもあり、それぞれのカレッジが独自に学生寮や礼拝堂、食堂、図書館などを持っています。町並みはそれらの集まりでできている。町を歩いて、一日ケンブリッジ生の気分を味わってきました。

ケンブリッジの学生は必ずどこかのカレッジに所属しなければならないようで、スポーツなどでのカレッジ対抗戦は非常に白熱するそうです。

なんだか昔読んだハリーポッターの物語を思い出します。グリフィンドールとかスリザリンとかあったけど、きっとここでの実際の学生生活もあんな感じ、と勝手に想像している。もちろん魔法はないけれど。



魔法のような天井ならありました。たくさんあるカレッジのひとつ、キングスカレッジの礼拝堂。





上でまるで枝のように広がる扇形ヴォールトの天井。



こんな天井は初めて見た。


2011/05/22

London(1)

このところ更新していなかったから、書くことがたまってしまっているな。徐々に書いて行こうと思います。

先週から一週間、イギリスはロンドンに行ってきました。
建築を見に行ったり、観光地を巡ったりしたのですが、中でも今回とても楽しみにしていたのがこれ。



London Symphony Orchestra

Shostakovich, Concerto for Trumpet, Piano and Strings
Shostakovich, Piano Concerto No.2
Tchaikovsky, Symphony No.3

Valery Gergiev (conductor)
Yefim Bronfman (piano)


ロンドン交響楽団のコンサートin London!

ロンドン交響楽団といえば僕でも名前くらいは聞いたことがある。かつてイギリスの音楽雑誌で世界のオーケストラトップ10に選ばれたほどの名オーケストラ。ぜひ生の音を、と思い行ってきました。

海外の名門オーケストラとなると、やっぱり服もそれなりのものを着てかなきゃいけない?そんな服をもってきてない自分は、ひょっとして門前払い...?と焦りましたが、全く問題なく入れてホッと一息(笑)



席からの眺め。

前半はショスタコービチのコンチェルト2つ。1楽章が終わったときに拍手があってピアニストがそれに応えて軽く会釈して笑いを誘ったり、曲自体もとても楽しくきけて、思わず声を出して笑ってしまう人もちらほらでした。



曲と曲の合間の休憩時間のようす。みんな一斉にホワイエに出てきて思い思いにコーヒーやワインを飲みながら、話をしている。一緒に来た人と前半の曲について語り合ったり、次の曲はどんな演奏なんだろうと期待を膨らませたりしている。僕はなぜだか、この時間がとても好き。



ホール裏手の広場。






後半の始まりが近づいて席に着いた人たちも、次の曲のプログラムを読んだり一緒に来た人と話をしたり楽しそう。

そんなお客さんを見ていると、いろいろと想像が働きます。普段はおしゃれをしない旦那さんが奥さんに「なぁなぁ、この服どう思う?」と尋ねるやりとりや、コンサートの前にいつもは行かないレストランに行って話に花を咲かせる様子とかを想像していました(笑)

後半の演奏はチャイコフスキーの3番。

コンサートマスターのGordanさんの存在感に圧倒される。ステージ上の小さな椅子にはおさまらない大きな動き。その大きな動きと音がオーケストラを引っ張り、会場全体の空気をひとつにしていた。

曲の終わり、ホールに響く最後の音がとてもきれいだった!

ブラボー!!



演奏会が終わって、みんな家に帰って行く。


今日聴きにきて、やっぱり生演奏ってやっぱりいいなと思いました。もちろん音自体が生だからというのもあるけれど、それだけじゃなくて。

以前は「演奏を聴く」こと自体が何よりも楽しみだったけど、コンサートがCDを聴くことと明らかに違うのは、おしゃれをしたり、食事をしたり、帰り道にいろんなことを話したり。自分が「コンサート」を楽しいと感じるのは、すばらしい演奏それ自体ではなく(もちろんそれが山場ではあるけれど)、周りにあるもろもろの出来事を含めてのことだったんだなぁと思いました。


となると、やっぱりそういう小さい出来事も大切にしたい。


「修学旅行は家に帰るまでが修学旅行だ!」とはよく聞く言葉ですが、これもなんだかこの日はその通りのように感じられて、改めてコンサートはいいなぁと思ったのです。

ステージ上でオケを引っ張っていたあの大きなコンサートマスターは、今日はこのあとどうするんだろう?家に帰って寝る前の一杯を、奥さんと一緒に飲んだりするのかな。

2011/05/09

the last concert

1泊2日でオーケストラの演奏旅行に行ってきました。


演奏旅行、といえば日本で夏休みに毎年行っていた合宿が思い出されます。そのときはバスで旅館に直行して、着いたら朝から晩まで練習して、夜中は飲み会、という日々。
てっきりこの旅行もたぶんそんなのだろう、と想像していたら、かなり違うものでした。

バスで朝出発して、演奏会場に直行かと思いきや、まず向かったのは...



何かの工場です。





この会社についての説明を聞いて、工場を見学。



小学校でやった社会科見学みたい。
オケの旅行で工場見学をするというのはなんとも不思議です。

友達に聞くと、この旅行のティータイムやランチ、そして演奏会後のパーティーのお金は、こういう企業が負担してくれているらしいです。そのかわり未来の社員である学生に、自分の会社をプレゼンする機会をもらえる、ということです。

だからこの旅行、なんとほぼ無料なんです。

さらに、お金がかからないのは旅行だけではありません。こちらではなんとオーケストラのためにお金を1ユーロも払わなくていい。運営に必要なお金は、大学や企業が支援してくれる仕組みだそうです。日本ではオケに参加するというと、ホールを借りたり、指揮者を呼んだり、合宿で旅館に泊まったり、1年を通してなにかと出費がかさむものです 。「自分の国ではオケに参加するには○○○円も必要なんだよ」と言ったらすごく驚いていました。



見学後、会場入り。



その裏にある湖。
ホールの裏に湖、という立地がフィンランドには多いので、シベリウスを聴くにはもってこい。今回の曲目はシベリウスではなく、ラフマニノフの交響曲第2番でしたが。
5年半前にオーケストラで初めてやった曲。



演奏会後にはこんな感じのパーティーがあります。日本の飲み会と違って優雅です。みんなしっかりドレスアップして、生演奏をBGMにダンス。BGMが自前なのはさすが。




この演奏会をもって1年に2度の定期演奏会を終えて、オーケストラは9月まで3ヶ月以上の長い夏休みに入ります。(日本では1年中やっていた気がします。)これで自分にとってはフィンランドでの最後の演奏会が終わったことになります。日本との違いを感じることも多くありましたが、本番のステージの上で感じる空気や、終わった後にまたやりたいなと思うのは同じ。



帰りのバスにて。10:00p.m.