2010/11/30

最近のフィンランド

お久しぶりです。
最近は太陽の光も弱くなって、3時頃になるともう暗くなり始めます。−10℃以下になる日も珍しくありません。手や耳を出して歩いたりなんてできるわけもなく、鼻の中もぱりぱり凍ってきます。11月終わりにしてこの寒さはフィンランドでも早い方らしいです。

そんな中、9月から取り組んできた設計課題がやっと一段落しました!とりあえず、ずっと根つめてやってたのでまずは頭をからっぽにしようと思い、久しぶりに湾沿いを散歩してみたら…


湾が凍ってましたよついに!!
道の左側の雪が積もってるのが湾。



いやー…ついに凍りましたかー…
氷は薄いのでまだ歩けなさそうです。歩いてる途中に割れでもしたらそれこそ命に関わりそうなので十分気をつけなくてはいけません。


シラカバの木の葉も落ちて、景色はすっかり冬の色。



太陽は常に低い位置にいます。来たばかりの頃、この太陽の美しさにとても感動して「今回の設計では太陽を建物の主役にしよう!」と意気込んだものでした。

そして結局どんな建物になったかは……次に続きます。


2010/11/25

正念場


更新が滞っていました。最近は模型製作のため、木の細かい部品をひたすら作り続けています。なんだか木工の職人になった気分だな。

この課題もいろいろあったけど、終わりが近づいてきた!あともう少し!!

Viikin Kirkko

大学からバスで30分くらい、ヴィーキ教会を見に行ってきました。

Viikin kirkko, JKMM Architects, 2005

この教会を設計したJKMMは最近のりにのっているフィンランドの建築家集団です。この前大学で彼らのレクチャーがあって、そのときこの教会が話に出てきて行きたくなった。

…最近教会ばっかり見てますが(笑)フィンランドには建築的におもしろい教会が多いのです。
フィンランドの人たちの信仰心は他の国に比べるとそんなに厳格ではないので、教会の形式に強いこだわりはなく、比較的自由な形の教会が建てられると、どこかの本で読んだ記憶があります。それに街にひとつずつ教会があるので、教会の数自体とても多い。見に行きたい教会もたくさんあるのです。



この教会の見どころは、なんといってもその美しい木組み。

フィンランドは森の国。木の国。
オタニエミの教会でも木のきれいな天井がありましたが、フィンランドの人たちの森や木に対する思い入れはとても強いんだろうなぁと思います。おもしろい木造建築も多い。大学にもたくさんの木材や木造建築に関する授業があり、世界的な木造建築の賞を自分から始めたりもしていて、木造に対する意識がとても高い国だと感じます。いやぁフィンランド来てよかった。



この木で組んだ空間、日本的なものを感じる…





神聖さ、というよりは、ほっと落ち着く感じがするのは、木でできているからでしょうか。



祭壇。後ろの窓から光が入っています。金色に反射する弱い光は、これまた日本を感じました。金屏風みたい。



左側の、ぽこっと出ているのが祭壇裏の光取り。



小さくて厚い木の板を鱗みたいに貼り付けた外壁。塗装などしていない無垢の木なので、年月を経るに従って色が変化していきます。最初はもっと茶色っぽかったのですが、今は灰色に近いです。



祭壇裏側の壁。かつての茶色っぽい色が少し残っています。こうやってだんだんと年をとって味が出てくるのが、木のよさのひとつだと思います。

この日は曇っていたので、中の光も弱い光でした。それもまた落ち着いたいい雰囲気でしたが、晴れた日の光もまたきれいという噂。次回のお楽しみです。

行き方
ヘルシンキ中央駅横のバス乗り場から68番のバスで約30分、Agronominkatu下車
下の検索サイト(Joruney Planner)でfromに”Helsinki Railway Station”、toに”Agronominkatu 5”と入れれば詳しくわかります。
http://www.reittiopas.fi/en/
open: 月、火、金9〜15時、 水9〜15時、16〜17時
開いているか事前に確認することをおすすめします。連絡先などはこちら

2010/11/20

建築を音楽にたとえて

アパートから歩いてほんのすぐところに、こんな教会があります。

Otaniemen Kappeli, Kaija & Heikki Siren, 1957

オタニエミの教会。ひっそりと、林の中に佇んでいます。ちなみにこれは秋の頃の写真。



タピオラの教会では"太陽の光"が主役でしたが、今度は"森"が主役。
中に入ると森は窓に切り取られて、十字架を挟んで対面するようになっています。森に向かって祈ることになります。森はフィンランドの人たちにとって大切な神聖な場所。。太陽といい森といい、フィンランドの人達にとって、自然がいかに大きな存在であるかがわかります。

ちなみにこの構成…どこかでみたような?と思う方もいるかもしれません。あの安藤忠雄が「水の教会」を設計する前にこの教会を見て、インスピレーションを得たと言われている…らしいです。



天井を見上げる。



祭壇の反対側、上の方から光が入ってきている。



天井は木を使ってはいるものの、キチッとした幾何学的な表現になっています。窓を通してみる自然と、この幾何学的な構成の対比がお互いを引き立て合うような。



この屋根の下で十字架ごしに切り取られた森をみていると、いつも見ているはずの森が、なんだかいつもと違って見えてきます。

ふと、少し前に読んだレイヴィスカの言葉を思い出しました。それはレイヴィスカが建築の目的について述べた文章で、読んで以来ずっと心に残っているものです。

「建築と音楽は同じテーマを異なる言葉で表現しているに過ぎない。どちらも、人間の理解を超えるこの無限の宇宙に、私たちが経験できる人間スケールの空間を創造することが目的である」

最初にこれを読んだときはいまいちピンとこなかったのですが、読んでからというもの、ノドに刺さった魚の骨のようにずっと心に引っかかっていて、建築を見に行くたびに思い浮かんできました。この言葉を自分なりに、自分がわかりやすく実感できるように、ひとつのたとえ話を考えてみました(笑)↓

* * * * * * *

あなたは何人もの演奏者が、思い思いにいろんな曲を練習しているひとつの部屋にいます。(オケの人は、合奏前のオーケストラの部室をイメージしてくれれば、まさにそれです)
彼らが奏でている旋律はそれぞれ違って、"太陽の光"や"森"、あるいはその国の"歴史"や"文化"だったりするのですが、いろんな音が部屋にあふれてすぎていて、それはもうぐちゃぐちゃで何がなんだかわからない状態です。

そこへ建築の設計者がやってきて、彼らのうちの何人かに声をかけ、あなたを彼らと一緒に隣にある別の部屋へ連れていきます。そして扉を閉め、おもむろに自分の楽器をとりだして、彼らと一緒に合奏をし始めます。この楽器が"建築"かな、と思うのです。合奏が始まると、前の部屋ではなにがなんだかわからなかった音達が、ひとつひとつとてもクリアに、意味のわかる音として聞こえてきます。ひとつひとつの音の綺麗さに改めて気づかされる感じです。そしてそれぞれの音が互いに響き合って、美しい音楽として聞こえてくる。

レイヴィスカの教会を初めて見たときも、まさにそんな感じでした。「ああ、太陽の光ってこんなに美しかったんだ。」と。
その太陽の光の中で、祈る人たち。
人々の営み、太陽、そして建築が奏でる、ひとつの音楽のように感じました。

最初の部屋にあふれているのは、ひとクセもふたクセもある一流の奏者達ですから、建築の設計者にとって、その中から誰を選び、どうまとめていくかは、とても骨の折れる大変な(でもそのぶんやりがいのある!)ことだと思います。設計者が誰を選び、どうやってうまくまとめているかを考えるのは、建築を見るときのひとつの楽しみですね。

こんなふうに、建築を音楽に例えて見るのが最近おもしろいです。

そして僕も今まさに、設計課題で"自然"という超一流奏者が奏でる"フィンランドの太陽"との合奏に悪戦苦闘しているところです。彼女(彼よりも彼女かな、と思う)と一緒にきれいな音楽を奏でることができれば、言うことはないのですが。

2010/11/13

満月のスープ

寒くなってきて、温かいスープがおいしくなる季節。
今日、ヘルシンキでアラビア社のカップを買ってきた。

夜の空のような、深い青色のカップ。

スープをおいしく飲む方法。

できあいのスープを買ってきて、鍋で一煮立ちさせて、できあがり。
カップと同じ深い青色の布にのせて…



「お待たせしました。満月のスープです。ごゆっくりどうぞ。」

ちょっとしたことで、何倍もおいしくなるような気がします。

2010/11/10

タピオラの教会

先日久しぶりに晴れた日に、大学の近くにある2つの教会を見に行ってきました。

まずはバスで5分程のところにあるタピオラの教会。


Tapiolankirkko, Aarno Ruusuvuori, 1965

コンクリート打ちっ放しの外観。ヘルシンキ工科大学出身の建築家アールノ・ルースヴオリ設計の教会です。



内部。一見がらーんとした何もない箱という印象ですが、無駄な装飾を持たないのもこの建物の主役を引き立てるため。実はこの建物も"太陽の光"を主役にしている建物です。



祭壇の上には天窓があり、祭壇の後ろの壁に光が落ちるようになっています。
このときは太陽が低く天窓から光は差し込んできていませんでしたが、時間によっては、祭壇の背後で光が移り変わっていのを見ることができるのでしょう。
レイヴィスカの教会(例えばこちら)もそうだったけど、こっちの建築を見ているとフィンランドの人たちが太陽の光をいかに大切に考えているかが感じられます。


祭壇の反対側には四角く縁取られた大きな窓があけられています。



この窓は西南西を向いています。この時間、西に傾いてきた高度の低い太陽は枠にかたどられてこんな光を壁に落としていました。中の光は1分1秒と変化していっています。夕焼け時、この建物はどんな色に染まるのだろうか…

太陽高度や太陽の軌道は常に変化しているから、その季節、その時間にしかみられない光や空間があると思います。天窓から光が差し込む瞬間も見てみたいので、また今度来ようと思います。

建築にしても何しても、ちょっとそこにいただけでは分からない場所のよさってあります。季節を通しての変化やそこで行われるいろんな行事などなど、ひとつのサイクルを経験してこそみえてくるものがあるかなーと思ってきています。

フィンランドの空や自然の変化の綺麗さも、暮らしてみて実感していることのひとつです。
夏の頃の写真(こちら)を見るとその違いにびっくり。そしてなつかしい。

オタニエミの教会へ続く(と思う)。

2010/11/08

夕日@偶然見つけた場所

久しぶりに晴れた。午後4時過ぎ。
模型材料を買いにいこうとヘルシンキ市内にバスで向かっていたのですが、窓から見える空がすごい色に染まっていました。今度はしっかりカメラを持ってる!思わず途中でバスを降りて、急いで湾沿いへ。



雲の背後に太陽が沈んでいて、そこが今まで見たことのない色に染まってた。


少しすると、太陽は雲の背後にいることをやめ、地平線に沈んでいきました。



前も書いた空の色は、この色です。森しかないので、空が全部見える。

ちなみにこの水面、海とつながっているので今まで「海」だと思っていたのですが、実は「海」と呼べないことがわかりました。しかも「湖」でもない…。じゃあ何というのかというと、友人から聞いたのですが「湾」というそうです。確かに地図でも「フィンランド湾」と書いてありました。
バルト海の入り口は非常に狭いので塩分が入って来にくく、それに対して湾に流れ込んでいる川の量は多いなどの理由で、水に含まれている塩分は非常に少なくなるのだそうです。なので海の魚も捕れません。代わりに淡水に住むサケが捕れますね。フィンランドと言えば、サーモンです。それとザリガニ。スーパーでエビだと思って買ってたのは実はザリガニ。







みなものゆらぎがとても綺麗でした。写真では揺らいでるのまでは伝えられない…このときは縞模様になってた。

気温はもう夜は0℃くらい。ピンと張り詰めた寒さ。
真冬はこの湾は凍るのでしょうか?だとしたらその上を歩いてみたいです。


2010/11/06

「じゃあ、表現しろ」

日常が戻ってきたので、たまには授業のことを。
写真は設計課題の模型です(課題内容はこちら)。この設計では、せっかく北欧に来たのだから、北欧で大切に思われている"太陽の光"を建物の主役にしたいなぁと考えてやっています。


コンセプトや模型は一応それっぽくできている(と思いたい)のですが、これだけでは実際の建物は建てられません。(もちろん実際に建てるわけではないのですが)部材の寸法や接合方法・壁の構成材などの詳細、建てる手順なども考えて図面にします。

となると1/10や1/20の図面で詳細を明記するわけですが、このスケールで詳細を示す図面となると、ほんとうに言い訳ができない。学部の時は1/100とかで図面をかくことが多かったのですが、1/10だと曖昧な部分を残せません。自分の考えていることが全部図面に出てきます。

でもその分、しっかりかかれた詳細図の迫力はすごいと感じます。その通りに実際の建物を建てるわけですから、ものとしての力が感じられるというか、実際に建つ建築としての"実感"がそこにはあります。


タイトルの言葉は、授業中に言われた言葉。「ここはどうなっているの?」とあまり考えていなかった痛いところをつかれ、自分でもよく分からないまま「そこはかいていないけれど、こうこうこうなっています」と説明したときに言われたもの。

「じゃあ、表現しろ」。先生には僕の説明が言い訳に聞こえたのだと思いますが…。口でいっているだけでは分からない、みんなが分かるようにちゃんと図面にしろということです。

それ以来、自分の考えたことはできるだけ図面にまでおとして授業に臨むようにしています。
実際図面にかくと自分の考えていることが全部そこに出てきて、説明もしやすいし、課題点がとても明確になって返ってきます。それに、あんまり英語ができなくても、図面が代わりに語ってくれます(笑…)

この案は1/30とかで全体模型作ったらめっちゃかっこいいだろうな〜…。でも時間がな〜…と悩みつつ。。とにかく3週間後の締め切りに向けてがんばろうと思います!!


「じゃあ、表現しろ」

とても心に残る言葉でした。

2010/11/04

Venezia 10/25~27


今週から授業が再開して、また日常が戻ってきました。一週間前に行ったベネチアのことを少し。
ベネチアは水の都。たくさんの建物が隙間なく並んで、その間に運河や水路、路地が入り組んで走っています。いろんなものがぎっしりつまった密度の濃い街。



下に見えるのは街の中心のひとつ、サンマルコ広場。



その横に広がる、ベネチアの潟。たくさんの船が行き来しています。
街には車や自転車は走っていません。交通手段は完全に船。さすがベネチア。



サンマルコ広場には鐘楼があり、定時になると鐘の音が街に響きます。上にも上れます。さっきの写真はあの上から撮ったもの。けっこう風が冷たかった。



サンマルコ広場。すわってまったりするのにとてもいい場所です。サンドイッチを食べて休んでいたら、水が地面からぼこぼこわき出してきました…!他にも街にはところどころ、たくさんの水たまり。街の人いわく、「それがベネチア」らしいです。中でもこの広場はヴェネチアでも低い場所であるらしく、ひどい高潮の時は完全に水没してしまうそう。そんなことになるのを防ぐために、潟の入り口に大規模な水門を作る「モーゼ計画」なるものが進行中だとか。スケールがでかいです。水と闘う街、ベネチア。


そしてベネチアにいってぜひやりたかったことの一つは、船に乗って運河を下ること。


しっかり乗ってきました。街の中心をながれる大きな運河、カナル・グランデを下ります。街のどこにいても、迷路みたいな路地で迷っても、この運河に出ればなんとかなる。カナルグランデは街の中心。



橋をくぐる。。。



太陽がまぶしい!
運河沿いにずらっと入り口を向ける建物達。車の代わりに船。こんな街並み見たことない。



街の中はこんなふうに小さい水路がめぐっています。道は細く入り組んでいて、ほんとうに迷路みたい。絶対迷う。それもまた楽しい。







夕暮れ時。
水の都と呼ばれる街はけっこうありますが、ベネチアはまさに水の都でした。



ヘルシンキは最近曇り空ばかりなので、ベネチアの水と太陽がなつかしい今日この頃です。