2010/12/28

書き納め。


午後12時半頃。北極圏最大の街、トロムソ。その展望台より。


明日からまた旅行に行ってきます。北極圏から帰ってきて、今度は一気に南へ。ベルリン、アテネ、エジプトと、3週間近くの旅行になります。

今年はいろいろありましたが、ひとまずこのブログを楽しんで続けることができました。ありがとうございます。本当はもっと書きたいことがいろいろあったのですが、また帰ってきたら。


いろいろ見て回って、元気で帰ってきます。

それでは…

みなさま、よいお年を!!

2010/12/26

Northern lights


オーロラ。北緯70度の街、ノルウェーのトロムソにて。
北欧に行くからには絶対見てみたいと意気込んでいたオーロラ。幸運にも、今回見ることができました。


トロムソの空港についたのは夜7時過ぎ。迎えに来てくれていたオーロラツアーの車に乗り込み、観測ポイントへと向かいます。30分程で到着して、外に出てみる。周りにあるのは星と、月と、海と、山、そして一本の道路。しばらくいるとやっぱりとても寒いので、車に戻って、空を眺めながら待ちます。
満月の光が驚くほど明るい。北斗七星はとても大きく、北極星はほぼ真上に見えていました。


運転手さんがふるまってくれたココアを飲みながら、ひたすら待ちます。

待ちます。待ちます。

待ちます…


あきらめかけたその時!見えた…!



雲のようにとても薄かったけれど、ぼんやりとした光が、北の空に確かに浮かんでいました。

空の神秘、オーロラ。北欧神話では、それはワルキューレ達の甲冑の輝きと言われているそうです。生きてるうちに、また見られるかな。








オーロラまたいつか!



2010/12/25

カレヴァ教会

Kalevankirkko, Raili & Reima Pietilä, 1967

クリスマス前の5日間、ノルウェー旅行に行ってきました。
フィンランドを発つ前にタンペレという街に寄ってそこから飛行機で飛んだのですが、タンペレにはムーミン博物館などもあって、とてもおもしろい街でした。
写真は訪れた場所の一つ、タンペレのカレヴァ教会。この教会での一連の体験がとても印象に残ったので、ここに書きたいと思います。



教会へは駅前からバスに乗って向かいます。駅前からまっすぐ並木道が延びていて、その先の丘に教会が建っているのが見えます。
両脇に建物のならぶ並木道を通って、バスは徐々に教会へと近づいていきます。



500メートルほどで、両脇にあった建物と並木は途絶え、視界は大きく開けます。ここでバスを降り、すぐそばにある小さな丘を登り始めます。





右側からぐるっと回り込む道。
教会を見上げながら、少しずつ、少しずつ入り口へと近づいていきます。この丘の道は、バスでやってきた訪問者のスピード感を緩めます。車に乗ってきたスピード感から、人間のペースに戻ることができる。それは少し特別な場所、特に教会という場所に向かう時には、とても重要なことだと思います。



さあいよいよ間近に行き着いて、この建物が実は30メートル近い高さがあるとても丈の高いものであることが分かります。入り口の横からくるっと、壁が伸びています。建物が手を伸ばして「さあ、中へどうぞ」と言っているような壁。



その壁に導かれるように階段を上り壁の内側へ入ると、今まで横に広がっていた空間は一気に縦に広がり始めます。ここで自分が徐々にこの教会の内部に入り込みつつあることを感じました。



礼拝堂に入る前に、両脇をコンクリートの壁に挟まれた風除室を通ります。ここは駅からここまでで、一番小さい空間。ガラス戸の向こうに礼拝堂が見えます。



扉を開けると、そこは礼拝堂。空間が一気に広がります。





この広がり感はカメラではなかなか収めることができません。入り口から一旦横へと広がって祭壇に向かってまた縮まる菱形の平面。そびえ立つコンクリートの壁と縦長の窓が視線を上へと誘って、これまでとは全く違う世界に入り込んだように感じます。先に見える祭壇に向かいます。



この教会の中でも、とても感動したのがこの床です!途中までは上り坂で、それから祭壇に向かってほんの僅かですが下っているのがわかるでしょうか。(もしかしたら下ってないのかもしれません。それほどわずかなものです)この勾配、これまで丘の下からずっと坂を上ってきた身体にとってはとっても効果的で、その変化はとても劇的なものに感じられるのです。この勾配を下りながら、丘の下から少しずつ少しずつ近づいて、自分はいよいよこの建物の体内へ入り込んでいる…。と感じました。





歩いていくと独特な形のコンクリートの壁の隙間から外の景色がちらちらと見え、また天井の見えもおもしろく、大空間にリズムを与えてくれています。
コンクリートの壁もすごく量感があるのですが、冷たくも重くもなく、温かい感じがするのは、独特の形とその間から差し込んでくる光の塩梅ゆえでしょうか。不思議と心が落ち着く空間になっています。





祭壇に着きました。その後ろにある木のオブジェ。



これは入り口近くにあった教会の模型。こんな形をしているようです。



帰る頃には、コンクリートの壁に夕陽が映し出されていました。



教会を出て、入り口を包み込む壁を左手に階段を下ります。階段を下りると壁はなくなって視界が開け、今となってはほぼ南側に沈むようになった夕日が見えました。そして教会を背に、街へと下りていきます。

建築を考えるとき、そこに至って、中に入ってそして去っていく、そういう一連の流れの中でひとつひとつの空間を考えなくてはなぁと改めて考えさせられました。そういうところも音楽と似ているものがあるかなと思います。


2010/12/15

冬の湾、半月と雪の風紋


今日もいつもどおり遅く起きてしまいました…ちょっと散歩しようと裏の湾におりてみると、なんとその上にいくつも足跡が!これは上を歩いてもいいということじゃないか…?表面をさすってみると厚く凍っているようでした。ついにこの時が…。最初は「だいじょぶか?ほんとにだいじょぶか?」と、割れはしないかとおそるおそる、だんだん慣れてきてザクザクと一面の雪の上を進みます。

ザクザク、ザクザクと。それでもやっぱり、割れはしないかとちょっと心配です。



カァーカァー…と鳴く声。あれはカラスかな。
そういえば夏は見なかった鳥を見かけたりもしたな。


雪の上には風紋が。風のかたちをここに残す。







一面の雪原に風紋、空に半月。まるで白い砂漠にいるようでした。


2010/12/14

半冬眠。。

授業も課題も全て終わって、冬休みに入りました。

「最近、朝全然起きられなくて…」と友達に言ったら「それは気候のせいですよ!」と言われました。太陽の光を浴びる時間が少ないと体もそれに正直に反応するようで、最近は半冬眠状態のくまみたいな生活になってしまっています。

目が覚めてもまだ外が暗いから、ついまた布団に潜り込んで、いつのまにか昼過ぎ(!?)。起きてちょっとぼんやりしていると、あっというまに日は暮れていきます。

暗くなってきて、今日の夕飯は何にしよう、と考え始めて、近くのスーパーに夕飯の材料を買いに行きます。最近は温度計を見なくても、空気の感じで気温をなんとなく察知できる。「お?今日はあったかいな。」と思ったら0℃、寒さにもだいぶ慣れてきたようです。

家に帰る途中、「もしも、今帰ろうとしている家がなかったらとしたら」という想像をたまにします。すると異国で一人とりのこされたような(実際そうなのですが)、世界で一番大切な場所をなくしたような、なんとも心細い気持ちになります。ちょっと、ぞっとします。家って普段は意識しないけど、深いところで心をしっかり支えてくれているなぁと思います。

今日は日本から送ってもらったカレールーでカレーを作りました。

これからビオラを少し練習して、寝ます。最近は、こんな感じです。



スープを飲むときに使った布を天井に貼って窓枠をつけたら、星の見える天窓みたいにならないか、とやってみましたが…イマイチ(笑)そりゃそうだ、やっぱり星は本物を眺めよう。

もうちょっとしたらノルウェーに旅立ちます!ノルウェーも北欧だから暗いけど…
オーロラとか建築を見てくるつもりです。

2010/12/12

Joulukonsertti!

こちらの大学のオーケストラのクリスマスコンサートで演奏してきました!9月から週に1回、本番前は週約2回の練習を重ねて、昨日がその本番でした。

我らがビオラパートはが7人で、みんないい人です(なんと日本人のビオラ弾きの方に巡り会えました!)。それに対して、チェロが15、6人はいるというアンバランスな構成で臨んだ演奏会でした。やっぱり、ビオラが人手不足というのは世界共通ですね。

でも日本とは違うな、と思うところもあって、例えば練習が終わるとみんなさっと片付けて、「じゃあね!」と言ってあっさり帰って行きます。日本みたいに部室になんとなーく残って、ぞろぞろとご飯を食べに行って、いろいろと話をして…みたいなことはないのです。
日本では練習が終わってもなんとなく一緒にいたくて、なんとなくぐだぐだしつつも、練習したりオケのこれからとかを熱く語りあったりもする…あの「なんだか一緒にいてしまう」空気も、日本独特だったんだなぁと思いました。今思えばあの時間、あの空気が好きだったな、と思います。そんな自分もやっぱり日本人。

あと驚いたのが、なんと休憩の時には缶ビールが売られます!驚きです。そしてけっこうな人がそれを飲んでます。フィンランドの人たちは総じてお酒好きみたいですね。日本でも「なんだか気持ちが乗らないなー」ってときなんかはやってみてもいい…かも?

そして迎えた本番ですが…なんと本番前にも習慣だからね、と言ってお酒を飲みます。
なんでも伝統的な儀式らしいのですが、まずpure alcoholを小さなグラスに注ぎ、みんなで輪になって「ア〜〜♪」っとハモってクイッと一杯。飲んだらまたみんなで「ア〜〜〜♪♪」とハモって、「ほら、声がきれいにでるようになったでしょう?」……。「でも声関係ないよね〜w」と思った謎の習慣wなんでもリラックスできるらしいです。僕もちょっとだけ飲んでみたら確かにリラックスできたような気がしました。



コンサートの曲目はシベリウス交響曲第3番、シューマンチェロ協奏曲、ベルリオーズリア王序曲でした。コンサートは9日と11日、2回行われて、写真は1回目の会場。素敵な会場でした。でも音はボァ〜ンと響いて合わせるのが難しい会場だったな。


壁一面にかけられているのはナイトがこの国にいた頃の、それぞれの家のシンボルらしいです。



2日目は小さめのコンサートホールで、割とうまくいった気がします。フィンランドでシベリウスを演奏できて、留学の目的をひとつ果たすことができました(笑)2楽章なんかは、最近のフィンランドのような、冬の厳しさを感じます。終楽章では冬があけた感じがしますが…それはこれから体験するところ。季節のサイクルを経験した後にシベリウスの音楽をどう感じるようになるのか、楽しみです。

アンコールはクリスマスメドレー…じゃなくてなんと合唱!!歌うんですね〜。本番前の儀式では声関係ないと思ったけど、そんなことありませんでした。みんなでクリスマスソングを歌いました。フィンランド語だしうまく歌えなかったけど、みんなはとてもうまくて、合唱部でも通用するんじゃないかと思いました。クリスマスの響きに包まれました。

演奏会が終わったら打ち上げパーティーです。会場は、ナイフやフォークがセットされていて、ろうそくの光がテーブルに灯る、とってもおしゃれなレストラン。

指揮者やソリストのあいさつから始まって、そこまでは日本と同じだったのですが、そこは歌好き(?)のフィンランド人、楽譜が配られてここでもみんなで歌を歌いました。アアルト大学オーケストラクリスマスソング。え!?そんなのあるの!?

その後も大合唱は続きます。なんでもそれぞれのお酒にそれぞれのお酒の歌があるらしく(なんと水の歌まで!)、一人が飲んで歌い出すと一気に広がって、みんなの大合唱になります。みんな歌いすぎ!みんな歌うまい!イイ声だしハモリはお手のもの。
歌い終わってかんぱーい!しばらくするとまた歌が始まります。不思議な一体感でした。

あいさつや歌が一段落すると、テーブルが半分片付けられて、団員による生演奏が始まりました。曲は軽快な舞曲。男の人が女の人をエスコートして、ダンスパーティーが始まります。みんなすごいおしゃれだし、背も高いし、ダンスも歌もあたりまえのようにこなします。優雅な夜でした。


夢のような一夜で、終わってから全然写真がないな〜…と少し後悔。でも楽しかった!春のコンサートでははラフマニノフの交響曲2番をやるらしく、すごく嬉しいです。大好きな曲だし、このタイミングで自分が大学に入って初めて演奏した交響曲をもう一回やるというのもなんだか感慨深いものがあります。またがんばりたいと思います。

2010/12/06

冬眠したい気分

大きな課題がひとつ終わったからでしょうか…最近はなんだか何をやる気もせず、ぼーっとしていたい気分です。幸いフィンランドの環境はそれを許してくれているので、とりあえず何もしないでいようと思います。そのうち何かやりたくなるだろう。

ヘルシンキ大聖堂。今日はフィンランドの独立記念日でした。


いつのまにか街もきれいに飾り付けられてクリスマスムードになっていました。もうすぐクリスマス。フィンランドでは、クリスマスは家族そろって過ごすのが習慣らしいです。
ぼんやり街を歩いていたら、なんだかサンタをすごく楽しみにしていた子供の頃を思い出しました。フィンランドの北のラップランドに行けば、国際サンタクロース協会公認サンタに会えるみたいです。さて、どうしたものか。

2010/12/02

変化し続けること



秋学期が終わろうとしています。
こっちに来てから3ヶ月間取り組んできた設計課題のまとめを、ここで書いておきたいと思います。


模型。

課題は"WOODEN MODULAR OFFICE"。"新しく開発される居住地域に、開発中の期間だけ仮設的に設置される小さな木造オフィスの設計。
自分なりのキーワードは「太陽光」、「変化」、「屋根」、「フィンランド」、「日本」。

今までさんざんフィンランドの空はきれい、太陽がきれいと言ってきましたが、課題を進める中でその理由を考えていました。
太陽がこんなに心を動かす理由…。色々あると思いますが、「変化し続けている」ことがひとつ大きなことかなと僕は思います。

そんなわけで、「太陽光の変化を映し出す建物を作りたい!」と考えました。
イメージしたのは、太陽の光に奏でられる楽器のような建物。


内観。

太陽は、この建物の「屋根」を通ることで建物内にいろんな光と影を作り出すようになっています。


断面パース(アトワン風)

見にくくて申し訳ない(_ _;)拡大してみると屋根の構成が見られます。
タイトルはフィンランド語の太陽"päivä"と屋根・天井"katto"を組み合わせて"päivänkatto"です。



建物正面。

縁側のような空間を通って建物に入ります。



内部見上げ。

時間が進むにつれて、いろんな光と影が天井に映るようになっています。縁側や建物内のカフェとかでおいしいお茶でも飲みながら、ゆっくりとその移り変りを眺めたりします。


8:00(春分・秋分)


11:30


12:10


15:30


16:30


日が沈んで、一日が終わって、そうしてまた太陽は東の方から昇ってきます。でもその位置は前の日とは微妙に違っていて、季節が進むと、いつのまにか太陽は全く違う角度から建物を照らすようになります。建物の中に表れる光の表情も、季節によって全然違うものになると思います。

このオフィスも地域の開発が終わればまた違う場所に運ばれていき、建物自体も変化の中にあります。この建物がなくなっても、日々移り変わっていく太陽の美しさをここを訪れた人の心に残すことができたなら、言うことはありません。


最後にもう少し。
変わり続けてることが心を動かされる大きな理由、と書きましたが、実は太陽のすごさってそれだけじゃないような気もしています。

こんなに日々変わり続けているのに、太陽って一年経つと元の位置に戻ってきますよね。これってあたりまえのようでいて、だからこそ太陽ってほんとすごいよなぁと思うのです。
これは、春にまた咲いた桜を見たときに、深く感動するのに似ています。うまく言えないけれど、変わり続けるものの背後に、一本しっかりした軸を感じる安心感のようなものだと思います。

後ろに大きな変わらないものがあって、その中で変わり続けている。
そういうところが、人の心を大きく動かすんだと僕は思います。